経営理念・ビジョン

事業を行うにあたり、状況の変化に対応するのは当然のことです。しかし、環境に流されるままでは経営とは言えません。また、企業として組織としてやっていくにあたっては、共通の目標が事業の確度を高めます。

経営学では経営理念、そして経営ビジョンという形で経営における目標を分類しています。

経営理念

自分は何のための事業を行うのかを考えたことはありますか?経営理念とは経営を行っていく上での強い思い、信念、自身の存在価値と言い換えることもできます。企業規模に関わらず、経営をやっていくに当たっては経営理念が非常に重要な意味を持ちます。

周りから見て、どういう思いで仕事をしているのか分からない人や、考え方が大きく違う人とは仕事をしにくいですよね。例えば、独立を考えているデザイナーが2人いたとします。次の2人のうち、どちらと仕事をしたいですか?

会社員はつまらないし、腕には自信があるから独立した方が儲かるんじゃないかと思うので独立しよう。

もっと顧客に喜んでもらうためには、今の会社のやりかたじゃだめだ。自分が理想とする成果を顧客に提供するために独立しよう。

いかがでしょうか、パフォーマンスが高そうな方はどちらでしょうか?あるいは自分の顧客を紹介しても良いと思えるのはどちらでしょうか?やはりBを選ばれた方が多いのではないでしょうか。それはなぜか?Aは自己の利益、Bは他者の利益を考えています。たくさんの同業者がいる中で、自分の儲けしか考えていないAにあえて仕事を発注しようと思わなかった、同じ発注するならBの方が良かったということではないでしょうか?このように、経営を行っていく上での思い、つまり理念は、他者から見て判断や評価の材料になりえるのです。

企業の目的は維持・存続です。維持・存続するためには企業として社会の役に立たなくてはいけません。社会に利益をもたらすために自分がいるのであって、自分に利益をもたらすために社会があるのではないということです。これは何もきれいごとを言っている訳でも、精神論を唱えている訳でもありません。儲けることができるのなら何でも良いというような、自己の利益しか考えていない企業を、あえて社会が対価を払ってまで受け入れる理由はないのです。不祥事を起こした企業が取引を停止されたり、バッシングをされたりするというのはそういったことに基づいているのではないでしょうか。もちろん、社会の役に立つといっても、企業規模によってできることは変わります。大企業は大企業なりに、中小企業は中小企業なりに、個人事業主は個人事業主なりに、できる範囲で社会の役に立てば良いのです。

経営理念は手を伸ばしても届かない空の星のようなもので、決して到達できないけれど、事業を行う限りずっと追い求めていくものです。だからこそ経営理念がある限り、環境が大きく変わっても進むべき方向を見失わないのです。

また、従業員を雇用して組織としてやっていくには、それぞれの仕事に対するスタンスがバラバラであるよりも、全員の方向性が一致している方が高いパフォーマンスを発揮するというのはイメージできると思います。そのためにも企業としての信念や存在理由である経営理念が重要になってきます。

さて、起業されていて経営理念と呼べるものがまだない、あるいはこれから起業したいと考えているものの、特に思いなんてなかったのでしたら、これを機会に理念を考えてみてください。理念といっても、必ずしも立派なものを掲げる必要はありませんし、「世界中の企業を元気にする」なんて実現することが到底不可能なものを掲げても嘘くさいだけですよね。また、ネットで検索して見つけてきた耳障わりの良い言葉でも意味がありません。あくまでも自分自身の経営者としての信念や思いを考えてみてください。

経営ビジョン

人材を採用するときの面接で「○○さんは×年後にどうなっていたいですか?」なんて聞いたりしませんか?では、あなたの会社は×年後どうなっていたいのか、ちゃんと考えていますか?

経営ビジョンとは、経営理念に基づいた近い未来、つまり×年後において目指す姿のことです。売上高や利益額、従業員規模といった定量的な目標もありますし、ブランドイメージやテレワークを導入するといった定性的な目標の両方がありえます。

経営理念は一度設定すると基本的に変更がないものであるのに対し、経営ビジョンは企業として目指す姿ですから、自社の成長や外部環境の変化とともに再定義されます。

理解度Check

以下の文章は正しいでしょうか?もし間違っているならどこが間違っているでしょうか?

経営理念は対外的にアピールするために活用されるが、経営ビジョンは内部で共有するために設定される。

×不正解
両方とも対外的も社内でも共有されるべきものです。対外的には企業としての思いを伝え、共感・賛同する顧客や協力者、自社で働きたい従業員を募るといった目的があります。内部においては組織内で統一された目標を持つためです。

経営戦略概論

環境分析

戦略意思決定

参考資料