損益計算書(P/L)

損益計算書は英語でprofit and loss statementと言い、一般的にP/LあるいはPLと略します。読み方は「ピーエル」です。会計上の収支を表すもので、売上高から5つの費用を引いていくという構成になっています。一般的な損益計算書は以下のようになっています。

損益計算書イメージ

それぞれの科目について

売上高

本来の事業活動による収入で、商品の販売額やサービス提供によって得たものなどが該当します。

売上原価

売上を上げるためにかかる直接的な費用です。製造業なら材料費、卸売業や小売業なら仕入れた商品などが該当しますが、クリエイターや制作会社の場合は直接部門(制作会社の場合はディレクターやデザイナーなど直接制作にかかわる人員)の人件費や直接部門の人員が使用する設備の減価償却費も含まれます。

業種や事業者によりますが、売上原価の詳細な内訳を記したものが決算書に添付されることもあります。

売上総利益

売上高から売上原価を差し引いた利益で、粗利益ともいいます。

個人事業主の方の場合は、所得税青色申告決算書の損益計算書の「⑦差引金額」が売上総利益を表わしています。

販売費及び一般管理費

事業活動を行うに当たって使用された費用の総額で、略して販管費ともいいます。主な科目を損益計算書に記載することもありますし、詳細な内容を記したものが別添されることもあります。

販売費一般管理費に含まれる費用としては、以下のようなものがあります。

役員報酬 会社役員に対する報酬
従業員給与 間接部門(総務や経理の人員など)の人件費
法定福利費 社会保険料の会社負担分です
接待交際費 クライアントとの食事などの接待交際などに使用した費用
新聞図書費 資料として購入した新聞や書籍代
広告宣伝費 広告宣伝やプロモーションの費用
旅費交通費 (従業員の分も含めた)交通費
地代家賃 事務所の家賃
通信費 電話代やネット代などの通信に関する費用
減価償却費 間接部門で使用している設備の減価償却費

営業利益

本来の事業活動によって得た利益を表しています。これがマイナスだと事業そのものが赤字、つまりビジネスとして成立していない状態ということになります。

営業外収益

来の事業活動以外から生じた収益のことで、預金や貸付金の利息である受取利息や所持している他社の株式の配当金である受取配当金などが含まれます。

営業外費用

本来の事業活動以外から生じた費用のことで、借入金の利息である支払利息などが含まれます。

経常利益

本来の事業活動の成果である営業利益に、経常的に発生する収益を足し、同じく経常的に発生する費用を差し引いた利益です。「けいつね」と呼ばれることがあります。

個人事業主の方の場合は、㊸青色申告特別控除前の所得金額が概ね経常利益に該当します。

特別利益

事業活動を行う中で発生したまれな利益で、設備を売却した額と簿価の差額がプラスだったときの固定資産売却益などが含まれます。

特別損失

事業活動を行う中で発生したまれな損益で、地震や火事、水害などによる被害である災害損失、設備などを売却した額と簿価の差額がマイナスだったときの固定資産売却損などが含まれます。

税引前当期純利益

経常利益から特別損失を差し引き、特別利益を足した利益になります。この値が0以下だと税金を払わないで良いということになりますが、一年間事業活動をやっても企業として全く成長していないということになります。

法人税、住民税及び事業税

課税所得に対して課された税金です。

税引後当期純利益

税金分を差し引いた利益になります。ここから株主への配当金が支払われ、最終的に残った分が、貸借対照表の純資産の部に計上されます。ここが赤字だと、貸借対照表の純資産の部にマイナスで計上されます。

Check Point
いずれかの利益がマイナスだった場合、すぐ上の費用を確認して、そこが過剰でないかを精査する必要があります。例えば、営業利益がマイナスだったとしたら、販売費及び一般管理費が過剰でないか項目ごとに精査をします。過剰でなければ、売上総利益が過少でないか(売上原価が過剰でないか)、売上がそもそも過少でないか、という風に損益計算書を順番に遡って、マイナスの原因を追究します。

その他の事項

減価償却費について

設備を購入した場合はどの費用で計上するのか、疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。高額で複数年に渡って使用できるような設備を購入した場合、減価償却費として計上します。

設備は時間の経過とともに価値が下がりますが、減少する資産価値を客観的に見積もることが難しいため、一定のルールに則って計算をした額を毎期の減価償却費として計上します。

最もポピュラーな計上方法は定額法と呼ばれていて、購入金額を設備の種類ごとに決まっている耐用年数で割った金額を1年分の減価償却費として計上する方法です。例えば、パソコンの耐用年数は4年です。年度の初日に40万円で購入した場合、4年間毎年10万円ずつ減価償却費として償却します。

減価償却費は現金の支払いがないのに費用計上される非資金費用と呼ばれる特殊な費用です。資金流出がないのに費用計上され、その分の利益が減少するため、税金を下げる効果があります。資金流出のない費用である減価償却費と後述する税引後当期純利益が、負債の返済費用に充てられることが多いです。

負債の返済について

損益計算書は収入と費用で構成されています。借入利息の返済は費用ですので営業外費用に計上されますが、負債の返済は費用ではありませんので損益計算書には計上されません。

繰り返しますが、損益計算書上は会計上の収支を表しています。したがって、利益に関しても会計上の利益であり、「損益計算書上の利益=現金」という訳ではありません。

現金の収支はキャッシュフロー計算書で確認できます。

理解度Check

以下の文章は正しいでしょうか?もし間違っているならどこが間違っているでしょうか?

損益計算書上で利益が出ていれば、その分の現金も増加して安全な状態だと言える。

×不正解
損益計算書が表しているのはは会計上の収支です。売上には売掛金が含まれており、費用にも減価償却費のような非資金費用も含まれているため、現金の収支と一致していません。現金の収支はキャッシュフロー計算書を見ないと分かりません。

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